東京をぐるっと囲むように、府中本町・東所沢・南浦和・南越谷・新三郷・南流山・新松戸・西船橋などを結ぶ、東京・埼玉・千葉にまたがる東京環状路線、JR武蔵野線。
このJR武蔵野線の新秋津駅（東京都武蔵野市）付近には、立体直行交差して西武池袋線が走っている。
いまこの2路線交差エリアで、西武池袋線とJR武蔵野線を相互直通運転する構想が出てきて、いろいろ話題が飛び交っている。
Googleマップで新秋津駅の北側にある秋津公園をみてみると、JR武蔵野線と西武池袋線を結ぶ、1本の線路が見える。
話題の構想案は、旅客列車は走らないこの JR・西武 連絡線を活用して、旅客列車の相互直通運転をめざすという計画だ。
この相互直通運転が実現すると、どんな列車移動イノベーションが起こるか。想像してみる。
路線図からみえてくる課題とメリット
JR武蔵野線＋西武池袋線 相互直通運転構想の周辺路線を描いてみた。
話題の中心、「西武 JR 連絡線」（赤文字・赤線）は、西武池袋線 所沢駅 からJR武蔵野線 府中本町駅へ向けて線路が結ばれている。
ここですでに、課題がひとつ。
進行方向が2度も逆転、折り返しの手間
たとえば西武線の西武秩父・飯能・所沢から JR武蔵野線に入り、時計まわりに走って、東京ディズニーリゾートの最寄り駅、JR京葉線 舞浜駅まで直通する列車に乗った場合。
西武秩父方面から乗った列車は、飯能駅で進行方向が逆転（折り返し・スイッチバック）し、さらにJR武蔵野線へと入り新秋津駅（付近）で再び進行方向を逆転させて、武蔵野線を時計まわりに走っていかなければならない。
一般的な通勤電車のように、横向きロングシートであればいいかもしれない。
特急車両のような前向きクロスシートの場合は、後ろ向きで走る区間が出てくる。
旅客列車を直通させるための保安設備やシステムの課題もあるうえに、乗務員やりくり、座席転換などの車内環境整備、ダイヤ設定と、いろいろハードルがある。
すでに直通している有楽町線で
ユーザー視点で、西武池袋線沿線から東京ディズニーリゾート最寄り駅 JR京葉線 舞浜駅へ行くには、JR武蔵野線を大回りするよりも、すでに直通している東京メトロ 有楽町線 直通 新木場行きに乗って、JR京葉線の電車で2駅で舞浜に行くほうが“使い慣れてる”とも感じてしまう。
東京ディズニーリゾートと西武池袋線エリアへの直通メリットのインパクトは、どれほどあるか未知数だ。
横浜方面や、新横浜から東海道新幹線も
横浜方面や、新横浜から東海道新幹線というアクセスも、すでにメトロ副都心線・東急東横線を介した直通列車が走っているから、JR武蔵野線と直通して横浜エリアへと結ぶ新ルートも、あまり期待できない。
そこで、描いてみた周辺路線図から期待できる、直通旅客列車の未来とメリットを、ひとつずつ想像してみる。
秩父・飯能⇔富士山・河口湖・甲府
描いてみた周辺路線図の西側（左側）エリア。
JR武蔵野線とJR中央線は、西国分寺（東京都国分寺市）付近で線路がつながっている。
また、JR武蔵野線と東北線（湘南新宿ラインなど）も、西浦和駅（埼玉県さいたま市）付近で同様に線路がつながっている。
こうした連絡線路を活用した定期旅客列車「むさしの号」（八王子～大宮）が走っている。
この地下連絡線路を介して、西武池袋線・JR武蔵野線・中央線がつながり、秩父・飯能⇔富士山・河口湖・甲府などの直通列車が走るかもしれない。
大宮からの新幹線アクセス
こんどは周辺路線図の北側（上側）エリア。
先述の通り、西武秩父・飯能・所沢からJR武蔵野線直通列車に乗ると、進行方向が1～2回、逆転することになるけど、定期旅客列車「むさしの号」（八王子～大宮）のルートに乗っかって、大宮を結べば、東北・上越・北陸・山形・秋田・北海道新幹線へのアクセスが向上する。
秩父・飯能・所沢⇔水戸・日立・いわき・仙台
続いて、描いてみた周辺路線図の東側（右側）エリア。
JR武蔵野線は、新松戸駅（千葉県松戸市）付近でJR常磐線とも線路がつながっている。
この連絡線路を活かし、西武池袋線・JR武蔵野線・JR常磐線をつなげた 秩父・飯能・所沢⇔土浦・水戸・日立・いわき・仙台を結ぶ列車の実現にも期待したい。
秩父・飯能⇔海浜幕張・房総方面
同じく、京葉線の海浜幕張方面を直通し、さらに木更津・館山・茂原・上総一ノ宮・勝浦・安房鴨川といった房総方面を結ぶことで、山間の渓谷美が広がる秩父と、海辺のリゾート地 房総エリアを結ぶ直通列車もあってもいい。
―――いろいろ想像すると、期待がふくらむ JR武蔵野線＋西武池袋線 相互直通運転構想。
「2028年の実現をめざす」という報道情報にも、「えっ？ 3年で？」「意外と早い」といった声があがっている。その行方が楽しみ。
